前回、「私たちは物事を認知する際に意味を付け加えることで、人によって異なる認識が生まれる」という話をした。

そして、意味情報が出来上がる際には「身体反応・記憶・言語」という3つの要素が関係しており、知識や経験が乏しいと、記憶に偏りがあるためメタ認知力が低くなるという話をした。

では、メタ認知力が低いと、何か問題があるのだろうか?

感情のコントロール

メタ認知能力が低いということは、つまり俯瞰して物事を見る能力が低いということを意味する。これによって生じる物事のひとつに、「感情のコントロール」がうまくできないということが挙げられる。

自分の感情というのは、基本的には自分の意志とは関係なく自然発生的に生じる場合がほとんど。

つまり、
「今自分がどういう感情なのか?」
「なぜその感情が生まれたのか?」
といったようなことは、意識下に自ら持ち込まなければ意味情報を加えて理解することができない。

例えば、上司に怒られて「イライラ」という感情が生まれたとき。

メタ認知能力が低いと「怒られた→イライラする」という一方的な想起で終わってしまうかもしれない。

一方で、視点を上げて「自分の感情」や「相手の感情」を見てみると「自分は何に怒っているんだろう?」ということを複数解で考えることができたり、「なぜ相手は自分に起こったんだろう?」ということに意味を加えて考えることができる。

「感情の原因」
・怒られた内容が納得できないからイライラしているのか?

・言われたことが図星で、反論の余地がないからイライラしているのか?
・怒られるようなことをしてしまって自分の不甲斐なさにイライラしているのか?
「原因の解釈」
・相手が怒ったのは、そのミスが重要な問題だったからかもしれない。
・前も別の人が同じミスをして、複数回目の説教でうんざりしていたのかもしれない。
・もしかすると、家庭がうまくいってなくてむしゃくしゃしていただけかもしれない。

 

そうやってメタ視点で考えることで、冷静に分析できたり、感情を見つめることができる。つまり、感情に振り回されて周りを不快にさせたり、自分で負の感情を増大させることが少なくなるということだ。

新聞広告クリエーティブコンテスト「しあわせ」をテーマに実施したコンテストで最優秀賞に輝いたのは、博報堂の山﨑さん。
自分たちが当たり前に触れているある物語を、別視点から捉えた面白い作品である。

https://www.pressnet.or.jp/adarc/adc/2013.html

メタ認知のメリット

メタ認知能力が高いことによって得られる最も大きなメリットは、楽しむ幅が増えることだと私は思う。

全く同じものを見ていても、視点が変わると別物のように感じることもある。そうやって、あらゆる物事を深く感じることができることで、人生がより一層豊かになる

メタ認知能力は、「問題解決能力」や「自己理解」、「コミュニケーション能力」の向上など、ビジネス的観点からそのメリットが提示されているが、究極を言えば人生を豊かにする力なのだ。

そのことを踏まえて、次回はメタ認知能力を高める方法について考えていきたい。

おすすめの記事