私たちは、日々たくさんの情報を記憶しています。

その中には、ほんの数分前の出来事なのに忘れてしまう情報もあれば、10年経っても覚えている情報など、さまざま。

では、私たちが忘れてしまうものと忘れずにいられるものの違いは、一体何なのでしょうか?その時、脳の中はどのようなことが起きているのでしょうか?

記憶を少しでもコントロールできれば、人生がより有意義になるはず。今回は「記憶のメカニズム」について、忘れ物が絶えない私から説明させていただきます。

記憶はどのように行われるのか?

まず、記憶と聞いて多くの人が思い浮かべるのが「海馬」の存在でしょう。

海馬とは、記憶をつかさどる脳の一部で、新しい記憶を一時的に保存・整理する場所になります。

大事なことは、「新しい記憶を一時的に保存・整理」するということ。つまり、海馬は短期記憶に優れた部位になります。

では、長期記憶はどの部分で行われるのでしょうか?

海馬に保存された情報は、その後大脳皮質へと転送され、蓄積されていきます。つまり、私たちの過去の記憶は「大脳皮質」にあるということになります。

ここでひとつ。皆さん、こんな経験はないでしょうか?

「あれ、何だっけあの人‥ほら、最近のドラマに出てた主演の‥」
「顔は出てるんだけど、なんていう名前だっけ‥えーっと‥」
「あー、そうそう!その人!」

聞いたことはあるけど、名前が出てこない。このとき、皆さんの脳にその名前は記憶されているでしょうか?

答えは、Yesです。
これは「記憶はされているけど引き出しがうまくできない」という状態です。PCにデータを保存したけど、どこに保存したか覚えていない、というようなことと同じです。

そして、記憶の想起において重要なのがこの「引き出し」です。

人は、記憶を呼び起こそうとするとき、神経回路を通じてアクセスします。神経細胞はお互い複雑に結びつきあってるため、様々な経路をもっていますが、繰り返し同じ経路を辿ると、その経路が太くなり、通りやすくなります。これにより、記憶が想起されやすくなるのです。

繰り返し学習に効果があるのは、この経路を何度も辿ることになるからです。

記憶は改変を繰り返す

もうひとつ、記憶について重要なポイントがあります。
それは、脳の記憶のされ方です。

実は、記憶というのは固定のものを引き出しているのではなく、思い起こすたびに新しく作り直されている、と考えられています。

先ほどPCの例を出しましたが、PCと脳の違いはそこにあります。

先ほども言ったように、脳は情報を引き出そうとすると、それを引き出すためのネットワークが構築されます。そしてその結びつきは、使わなければどんどん弱まっていきます。そして、使用すると再び結びつきが強くなる。このときに記憶も新しく改変され、記憶されるのです。

例えば、昨日の晩御飯に何を食べたかについて、思い出そうとしてみてください。
その食卓に並んだ食事をイメージして、1週間後にまた同じように思い出そうとすると、違う形で記憶が想起されます。

こうして、私たちは記憶の改変を繰り返しながら、最新の記憶を正として記憶していくのです。

では、私たちが記憶を強化しようと思うと、どうするのが効果的なのでしょうか?

察しがいい人はもうお気づきかもしれません。
そう、思い出そうとすることが、記憶の定着に役立ちます

まとめ

私たちの脳は、思い出そうとするときにネットワークが強化されます。実は、3回繰り返し同じ情報を見るよりも、1回見て2回思い起こす方が効果的であると言われています。

そう考えると、現代の人たちはスマホによって「思い出そうとする」回数が確実に減っているでしょう。検索すれば、簡単に情報が出てくるからです。もし、皆さんが強化したい記憶があるなら、「検索するクセをやめてみる」というのもひとつの手かもしれません。

そうやって捻り出した情報こそ、皆さんの中に強く刻まれていくのです。

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