子どもの頃、「姿勢を正しなさい」と怒られることはありませんでしたか?
私は、椅子に座っている時の姿勢をよく親に注意されていました。
大人になると、「姿勢が悪いことは身体に悪いっぽい」というざっくりとしたイメージこそあるものの、具体的にどのような要因があるかは、そこまで気にしたことはない人が殆どではないでしょうか。
「骨盤が歪む」とか「血流が悪くなる」とか「身体の節々が痛くなる」とか、物理的なダメージがあるというのはなんとなく想像できますが、「姿勢が悪いことは、自分たちの人格にまで影響を及ぼす可能性を秘めている」と言われたら、ちょっとびっくりしませんか?
今回は、そんな身体がもたらす心理的影響についてお話しします。
ストレスホルモンの上昇
コロンビア大学の研究で、面白い実験結果が出ました。
とある2つのグループに指定した姿勢をとらせます。
A.肩をすぼめる、背中を丸めるなどの弱いポーズ
B.胸を張る、背中を反るなどの強いポーズ
すると、弱いポーズをとらせたグループの方は、通常よりストレス値が上がったのです。
ストレス値は、ストレスホルモンの分泌量ではかることができます。ストレスに感じた時、それに対抗しようと分泌されるのが、ストレスホルモン。そして、いくつか種類があるストレスホルモンの中で、代表的なホルモンが「コルチゾール」です。
通常、コルチゾールは朝に分泌量が多くなるそうです。しかし、過度なストレスにさらされることで、分泌量が慢性的に増えることがあります。
大前提、コルチゾールはストレスから身を守ろうとしてくれるものなので、コルチゾール自体は完全悪という訳ではありません。むしろ、身体に欠かせないホルモンです。しかし、これが過剰に分泌されると、免疫力が落ちたり、集中力が低下したり、海馬が萎縮してしまったりといった障害をもたらします。
先ほどもいったように、ストレスホルモンはストレス状態で分泌されます。つまり、身体がストレスに感じる状態を長期間続けることで、ストレスホルモンが過剰に分泌され、身体や脳に悪影響を及ぼしてしまうのです。
テストステロンの低下
もうひとつ、弱いポーズをとらせたグループにみられた変化があります。
それは、テストステロンの低下です。
テストステロンは、男性ホルモンに代表されるホルモンで、骨や筋肉をつくる働きがあります。また、近年ではより多様な要素がこのホルモンによって影響がもたらされると言われています。
・新しいことに挑戦しようとする「冒険心」
・仕事やスポーツに懸命に取り組む「競争心」
・仲間や周囲との関係を大切にする「社会性」
テストステロンには、これらを高める作用があると言われています。
つまり、人の心理状態、行動、はたまた周りから見るその人の人格にまで、テストステロンは大きな影響をもたらしています。
そして、姿勢が悪いことによって、それらの分泌量が低下してしまうということは、姿勢から人格形成が始まっているといっても過言ではないと思いませんか?
今回の姿勢に関することもそうですが、身体と心理は密接に関わっています。
自分たちの思ってもみないところで、自分の身体に変化が生まれ、それによって心に影響をもたらす。
その因果関係を知るだけで、人生の生きやすさに繋がっているのです。