そもそも、明日は部活があるのだろうか。時計をタップしてカレンダーを表示させると、明日の予定に「女バス会議」と書いてあった。なんだこれは。
「遥夏~はやく帰ろ~」
部長はタオルと水筒を持って、また、わたしを手招きしていた。
「部長、明日って部活ある?」
わたしは部長のもとに向かって、歩きながら話しかけた。部長は、あきれたような表情を浮かべた後に、わたしに叫ぶように話した。
「明日は、女バス会議!カレンダー送ったじゃん!」
「……部活じゃないの?会議ってなに?」
「女バスで集まるから部活でしょ?……まあ、練習やらないし、今後の作戦会議って感じだけど。」
「……ふ~ん。」
「聞いてきたのに、ふ~ん、ってなによ。もうちょいなんかあるでしょ。」
「あ、ごめん。ありがとう。」
「……そういうことでもないんだけどなあ……」
じゃあ何を求めているんだ、と言いたくなったが心の中にしまっておいた。
部長はいつも、そうやって自分の中の答えを、まわりに求めてくる。薄々気付いているが、わたしの答えと部長の求めてくる答えは、どうやらちょっと違うらしい。今日もきっとその一つだ。
わたしと部長は、なんとなくお互いが揃ってから、体育館を出た。後輩と楽しそうに話す部長を横目に、わたしは気配を消しながら更衣室を出た。
「遥夏先輩、お疲れ様です!」
「……お疲れさまでした。」
気配は消しきれなかったが、どうやら部長はおかまいなしのようだった。わたしに挨拶をし終わった後輩を捕まえて、また話し始めた。
わたしの習慣が一つなくなったのだから、部長の習慣を一日お休みしたっていいだろう。仕返しするなんて、ちょっと子供っぽいなあ、と自分が少しみじめに思えた。それでも、駐輪場に向かう足取りが、いつもよりほんの少し軽いのは、気のせいだろうか。家に帰って廊下を歩いていると、キッチンから母の声が聞こえた。
「遥夏、おかえり。」
「ただいま。」
母の姿を見ずに、そのまま自分の部屋に入ろうとしたところで、インターフォンが鳴った。
「遥夏、ちょっと出てくれる?」
「……はぁい」
鞄をどさっと廊下に置いて、再び玄関へ戻った。
母がなにかの通販で頼んだであろう段ボールを受け取ると、ふと、郵便ポストが目に入った。普段、郵便ポストなんて、開けることも見ることもなかったのに。
半透明になっている窓をよく見ると、封筒が見えた。
どうせまた役所の手紙だろう、と思ってポストを開けると、白い封筒が一つ、ぽつんとたたずんでいた。手に取って見ると、役所から送られたものではなかったらしい。
真っ白の封筒に、ろうそくを固めたようなシールで封をしてあった。誰が、こんなものを、誰に送ってきたんだろうと不思議に思いながら、封筒をひっくり返した。
「……え?」
見慣れた文字で書かれた「稲村 遥夏様」という文字に、
わたしの心臓が、どくん、と大きく音を立てた。