移動の荷物が多く、ドライバーに力を借りて積荷しているときに、道が狭く散歩中の犬がタクシーが通り過ぎるのを待っていた。止まっているように見えたその犬は足を引きづりながら前進しており、数十秒の間、犬を待つ時間が生まれた。
論語の中に「孔子は喪服を着た人、礼服を着た人、盲人を見かけた時は、どんなに若い人であっても立ち上がって敬意を表された。またその側を通り過ぎるときには足運びに注意した。」という一文がある。数十秒であるがその場で全員がその前に進むエネルギーへの敬意として(もしくは道を占領してしまった申し訳無さから)自然と形を改めた。
2022年2月22日は「猫の日」ではなく100年に1度の記念すべき「スーパー猫の日」を迎えた。『犬派?猫派?』という問いに「実家の隣が犬、反対の隣が猫を飼っていたからどちらも」という質問に答えていない形で回答をしてしまう。アメリカ動物虐待防止協会の調査によると、パンデミック期間中に米国では2300万世帯以上がペットを家に向かい入れたようだ。ペットの歴史は3万年前にオオカミと共存、1万4千年前の遺跡から犬の骨が、BC4千年の遺跡からは猫の骨が発掘されており、人類と動物には長い時間関わりがあったとされている。
『Mashable』の記事では「犬の分離不安」についてその適切な対応が紹介されている。分離不安とは犬が飼い主や、他のペットと離れるとストレスを感じる状態のことで、4000頭以上の犬を対象とした調査では13%が分離不安を示すと報告されている。犬は社会的な絆を乱すようなことが起こると分離不安を経験するようだ。引っ越しや日課の変化、休暇を終えた子供が学校に戻ることが考えられる。犬の分離不安に対する予防策の中に「健康的な境界線を引くこと」として一日のうちに一人の時間を作ることが推奨されている。
『Pet Health Network 』の記事では、人間と同様に体と脳に十分な刺激が与えれない犬は落ち着きがなく、破壊的で、しつけが難しいと紹介されている。身体的・精神的な刺激をバランスよく受けることで、幸せで順応性と高い生活が送ることできる。幸せで満たされた、バランスのとれた状態であるためにある量の心身のエネルギーを消費することが必要であると触れられている。
テキサス州ヒューストンにあるサイプレス・クリーク農園のリーはホースセラピストとして癒しを与えている。馬は言語ではなくエネルギーで会話すると紹介しており、「体が離れているだけで心では繋がっている。離れることで自分の時間を作れる。」と述べる。
分離不安は犬だけではなく人にもあることで生後8ヶ月頃から1歳半に最も強くなるとされている。その時期を超えた現在でも捨てられないTシャツなどの有形なものをあれば、これまで大事にしてきた価値観など無形なものを含め、手放すと不安になるようなことは探せば見つかるかもしれない。
数十秒という犬が作り出した時間が、何もしないことをする時間になった。遠くの空では風を受ける役である先頭を入れ替えている途中の渡り鳥が見えた。「何もしたくない」や「一人になりたい」というのは、何かと境界線を引いて考えている時間になっているのかもしれない。『動物が私たちから学ぶことよりも、私たちが動物から学ぶことのほうが多い』という言葉を思い出した。