この前、新しくリニューアルオープンした家の近くのサウナに初めて行きました。水を持っていくのを忘れたため、温泉に備えられていた自販機で水を買おうとすると、なんと1本170円。

「水に170円かぁ。」

迷った僕は、結局水を買うのを諦めました。

皆さんは、自販機の割高の水を買う派ですか?渋る派ですか?
今回は、人に備わった「損」についての不思議な現象についてお伝えします。

損失回避の心理

こんな面白い実験が、科学雑誌「Newton」に載っていました。

[実験内容]とある2つのグループに、こんな質問をします。

【質問】
ある病気が流行したことで、この地域で6万人が死亡することが予想されています。
その対策として、A、Bどちらかのプログラムを実行することになりました。
あなたはどちらのプログラムに票を入れますか?

このとき、2つのグループで、違う回答表記を提示します。

・グループ1
A. 2万人が助かる
B. 1/3の確率で6万人が助かるが、2/3の確率で誰も助からない

・グループ2
A. 4万人が死亡する
B. 1/3の確率で誰も死亡しないが、2/3の確率で6万人が死亡する

見てわかる通り、1と2では言い方が違うだけで、結果は全く同じものです。

「6万人中2万人が助かる」と「6万人中4万人が死亡する」は、この文中では同じことを意味します。

しかし、この2つの結果には明らかな違いが見られました。
以下が、2つのグループで投票した結果です。

「グループ1の投票率」

A.72%
B.28%

「グループ2の投票率」

A.22%
B.78%

このように、同じ情報でも提示方法によって判断が変わってしまうことを「フレーミング効果」と呼ばれます。このようなことが起きる背景には、人間に備わった「損失回避」の思考にあると考えられています。

人は、同程度の利益と損失があったとき、損失を重く受け止めてしまいます。1万円を手に入れたときよりも、1万円を失った時の方が心理的影響が大きいということです。

このような判断の歪みを「プロスペクト理論」と言います。

「プロスペクト理論とは」

不確実な状況下で意思決定を行う際に、事実と異なる認識の歪みが作用するという意思決定モデルを表した理論。行動経済学者であるダニエル・カーネマン氏とエイモス・トベルスキー氏によって1979年に提唱された。

「フレーミング効果とは」

同じ情報でも、それを提示する方法によって人々の判断や意思決定が変化する現象のこと。プリンストン大学名誉教授のダニエル・カーネマン氏と、心理学者の故エイモス・トヴェルスキー氏によって1981年に発表された。

人は、備わった性質によって合理的な判断ができなくなってしまうことがあります。プラスの状況が期待できることでも、損をしたくないという一心でその選択をとることができない、ということが起こりうるということです。

「リスクを避ける」というのは、生物の生存戦略から考えるとごくごく自然な判断です。しかし、現代は生命の危機を感じることがないような状況があまりありません。

それでも、私たちに備わった性質は基本的には変わらずあるために、合理性に欠ける判断になってしまうこともあるのです。

具体的には以下のようなものがあります。

・有効期限付きのポイント

・期間限定の割引キャンペーン

・恋人と惰性で付き合っている

・なかなか転職に踏み出せない

私たちは、まず「実体以上に損を大きく見積もってしまう」心理が備わっているということを知ることが大切でしょう。

人生は、リスクがあるところに面白さがあったりもするものです。心の状態を客観視し、時にはリスクを受け入れることで、思わぬ方向に人生が好転するかもしれません。

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