家を出るときに何を確認しているだろうか。「靴のかかとと足のかかとをピッタリ合わせる」「かばんは左肩にかける」「(そんなことより電車がきてしまう)」「縁起をかついて右足から家を出る」「パートナーにキス」「(ペットに対して)行ってきます」 
「忘れ物はないか」と自問することは個人的には多いと感じる。
スマホとイヤホン。それらを触らない時間を作ることを「デジタルデトックス」と言い、自発的に控える必要があるほどの存在になっている。『思い出せない なかった頃 必需品ですね これ本当』という歌詞があるが、その通りだ。
鍵。小学生のときに家の鍵を早くから持っている同級生が少し大人に感じた。いまではスマートロックにより電子機器で開錠、施錠ができる。
財布。小銭だけをもって文房具屋へ駆け込んだあのワクワクする感覚はいまだに感じるものである。いまではキャッシュレス化が進んでいる。
そのキャッシュレス派は、現在日本では約20%、主要各国では40~60%台であると言われている。
経済産業省の発表では「2025年6月までに4割程度、将来的には世界最高水準80%を目指す」という記述があった。今後は様々な施策のためにこの流れは加速していくだろう。
スマートフォンによる決済の最初は、Twitterで「QRコード決済をしている中国人おばあちゃんの動画」を見たことである。友人とインドネシアに旅行した帰り道、寄り道して上海まで確認する機会があった。
当時の日本では見たことがないその消費行動に興奮し、スターバックスコーヒーにて同世代の女性に話を聞かせてもらった。「アリペイやWeChatなどがあるよ、日常的に使っている」ということを教えてもらった。(「少々日本語を知っているから話していいか」と言われ、彼女の話す二人称が【おまえ】という言葉が強かったことを覚えている。)その非日常がいまでは日常になっている。
そのような中、財務省は偽造防止対策と識別性向上を目的に、2024年に日本銀行券を新たに製造することを発表している。図柄に採用されたのは新一万円券は渋沢栄一、新五千円券は津田梅子、新千円券は北里柴三郎である。先日、北里柴三郎のゆかりの地である熊本県阿蘇郡小国町を訪れる機会があった。
阿蘇の雄大な夜空を見る計画が、雨のため果たすことができなかった。早く就寝したおかげか、雨も上がり見渡す限り広がる大草原の中で朝日を拝むことができた。朝食の時間を待たずに大観峰から「阿蘇の涅槃像」を眺めることができた。ぜひご覧いただきたい。
そんな大自然で育った北里柴三郎は、ローベルトコッホに師事し、伝染病予防や細菌学に貢献した医学者として知られている。また、多くの優秀な弟子を輩出している教育者でもある。弟子たちが畏敬の念と親しみを込めて付けたあだ名が「ドンネルおやじ」であり、ドイツ語で「雷おやじ」である。研究所員に対しては大変厳しかったようだった。弟子に対して「この叱責に縮みあがるような者は伸びることができない、自ら反省して進む者のみが大成する」と言っていたという。「終始一貫」が座右の銘である北里柴三郎は、任せると決めたときには、集中できる環境づくりをした。
時代と逆行した紙幣の一新であるが、「人に歴史あり」で触れることで一回の買い物も新紙幣を使うたびに、電子決済とは異なる体験が得られる。肖像画を見るたびに、何を感じるのかが楽しみである。
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