有楽町で食事をした帰りの電車に、読書の手が止まるほど存在を無視できない女性が乗車した。
黒革のジャケットと緑のニット。ウェーブのかかった前髪。左指の金の指輪と、長さが肩から膝まである巨大なふ菓子。
黄色と茶色のパッケージには「小江戸」「川越」の文字があった。川越の菓子屋横丁から帰りである。
明治の初めに菓子職人である鈴木藤左衛門が飴や駄菓子を作り始めたお店が菓子屋横丁の草分けとなり、1920年代には70軒ほど業者が居たと川越市は紹介している。昔の駄菓子を懐かしんだお土産として選ばれた巨大なふ菓子はどのように消費されていくのか考えながら、『自分とお菓子』について考えた。
代表的なのが「きのこ派とたけのこ派」の熱い討論がお馴染みの話題ではないかと思う。恥ずかしながらきのこのみで育ったきのこ派であったため、「総選挙」の結果も気にかけずに暮らしていたが、#きのこたけのこ国民総選挙ノーサイド というハッシュタグと共に2019年末に「終止符が打たれた」らしい。福島県以外の全都道府県でたけのこ派がきのこ派を上回っているようだ。まさか決着がつくことがあるのかと思った。
子どもの頃に好きだったお菓子に、「それにつけてもおやつはカール」でおなじみのカールがある。カールは1968年7月に日本初のスナック菓子として発売開始した。『テレビで見なくなった人を紹介して』に即答できないように、無くなったものは気づきにくい。カールもその一つで、2017年8月より西日本でしか買うことができなくなっているようだ。オンラインで販売しているようだが、ネットで買うのはなんとなく許せない心理がある。
パンデミックによって内食需要拡大と健康意識の向上傾向により、「You are what you eat」ということわざに習い口にするものに気を遣うようになった。その一つとして買い物の際に食品表示を確認する習慣が形成されつつある。健康はお金では買うことができないと学んだ結果、お菓子を手に取る頻度が減ってきていることに気づいた。お菓子を食べる頻度が減っていき、いずれ全く食べない日がやってくるのかと想像する中で、健康の希望となるスナック菓子を『FoodNavigator-USA』記事で知ることができた。
スナック菓子業界では、フルーツをより多く、丸ごと、または単独で使用した体に良い製品を提供する努力がなされてきた。これらは砂糖や添加物が多く、栄養価の低い製品が依然として主流であるとされている。そんな中、健康スナック菓子新興企業の「Eat the Change」は、『フルーツを一切使わない』製品を発表している。それらの材料は、有機ニンジン、濃縮果汁、有機天然フレーバー、鮮度保持のための有機クエン酸という4つの材料だけというシンプルなものであり、ニンジンを少量のマリネ液に漬けて味付けし、脱水して、消費者が満足できる噛み応えのあるスナックだ。「キャロットレーズン」のような味と食感と説明されている。
記事では、これには規格外のニンジンも使用することが可能であり、大豆に比べて必要な水の量が1/10で済むため持続可能な生産が可能であると書かれている。健康意識の向上が進む中で、今後あらゆる分野に対して『健康』であることがスナック菓子にも求められ、健康意識の高い人達のお供となるものが誕生するかもしれない。