読者の皆様は、どれほどの大豆製品を挙げることができるだろうか。
お味噌、お醤油、お豆腐、納豆、煮豆、黒豆、豆乳、大豆油、最近では大豆ミートのシェアが拡大している。2013年に日本人の伝統的な食文化である「和食」がユネスコ無形文化遺産に登録されており、誇らしい日本の文化がそこにある。
『しょうゆ情報センター』の記事によると、醤油は弥生時代から古墳時代にかけて塩漬け発酵食品として出現した「醤」、鎌倉時代には醬油のもととなる「溜」、室町時代に日本で初めて「醬油」の文字が文献に現れているようだ。江戸時代に産業として大きく発展し、最初に醤油を販売したのは「紀州・湯浅」とされている。そんなお醬油の国内消費量は減少傾向にある。
お醬油だけでなく、お米も同じように消費量が50年前の1980年に比べて40%減であると農林水産省の記事で紹介されている。家でご飯を炊く割合が減り、外食などを利用する割合は2019年には32.7%に増加傾向にある。世界に誇る食文化がありながらも、胸がちくりとする事実である。
大型連休中に醬油工場を見学することができた。申し込み先を検索すると「情報をできるだけ公開しています。」という記述から懐の深さを楽々と想像できる。いま企業に求められる責任として「持続可能性(サスティナビリティ)」があるが、醬油づくりのプロセスそのものが循環されており、例えば「しぼる」段階で使用するふろしきは牛の餌になるなど紹介いただいた(乾燥させたふろしきを一部持ち帰ることもできた)。
国内の消費量は減少する中、海外での生産数量は右肩上がりであり、北米を中心に世界に躍進を続けている。『CNN Travel』の記事では、タイ、フィリピン、インドネシア、韓国など、各国の醤油はそれぞれ個性的な風味を持っているという内容と共に、アフリカにある人口約80万人のフランスの海外島、レユニオン島への旅について伝えられている。
レユニオン島は、香港にある醤油の輸入国であり、毎年30~40コンテナのソースを輸入していた。醬油工場の経営者であるチャンが、遠く離れたアフリカの火山島で、なぜ醤油をたくさん買ってくれるのか、出張のついでに立ち寄った。地元のパン屋に入ると、カウンターの上に炊飯器が2つ置いてあり、その中には中華料理のシュウマイが入っていた。豚肉の団子(現地ではブションと呼ぶ)に醬油をかけたもので、レユニオンでは定番のおやつであることが説明されている。
遠く離れたもしかしたら一度も知らずにいたかもしれないアフリカの島で、私たちと同じようにシュウマイをよりおいしくいただくために、お醬油を使う習慣がある。このストーリーから「どうしてお醤油が必要なのか」「なぜお醤油がすきなのか」「どういうこと?」と聞かれたときの理由が一つ引き出しが増えたといえるだろう。