「ちょっと茶でもしばこう」と関西出身の友人から言われ、検索した結果その言葉の意味に安心した経験がある方はいらっしゃるだろうか。
「茶をしばく」とは【お茶を飲む】という意味で関西でよく使われる言葉である。駅前なのか、ショッピングモールなのか、お気に入りコーヒースタンドなのか、さまざまな環境に囲まれている。
そんな「茶でもしばこう」を17世紀のイギリスにタイムスリップし、当時の流行について紹介したい。
コーヒーハウス
17世紀のイギリスはヨーロッパ、アジア、アメリカ、アフリカを繋げる貿易の中心であったため、世界中のものを最も安く手に入れることができていた。
当時の時代背景については、ほろ苦いハナシやあまいハナシを参照いただけると幸いである。
そんなイギリスでは「コーヒーハウス」というものがあった。起源としては、1650年に大学街で知られるオックスフォードで生まれた説がある。その2年後にはロンドンにもできた。10年の間に数千軒のコーヒーハウスが開店し大流行となった。
そんなイギリスでは「コーヒーハウス」というものがあった。起源としては、1650年に大学街で知られるオックスフォードで生まれた説がある。その2年後にはロンドンにもできた。10年の間に数千軒のコーヒーハウスが開店し大流行となった。
コーヒーハウスは外国から来た新しい飲み物や嗜好品が集まる場所で、コーヒーを主に、紅茶やチョコレート、たばこなども販売された。
喫茶店だけでなく「社交場」としての機能があり、そこで情報を交換したり、商談が行われたり、親睦を深めてた。個別の席などはなく、大きなテーブルを囲んで議論していたようで、そこには多少の身分や経済力の違いは問題にしない「自由」の雰囲気があり、近代の文化といわれるもののほとんどがコーヒーハウスからを生み出された。
コーヒーハウスから生まれたもの
情報交換が行われていたことで、情報産業が発達した。そのころに誕生した「新聞」は、コーヒーハウスに集まった人々に対する取材の内容で構成されていた。新聞を読むのも、誰かが声を出して読み上げていた。
文学、芝居、音楽について語る文化もあり、文学の中で「小説」という分野が誕生した。
他にも、「政党」も誕生したのがコーヒーハウスと言われており、トーリ派とウィッグ派という2つの政党が議論をして政治を進めていた。
また当時のイギリスにはイングランド銀行が創設され、国債や株のようなものが出回り始めており、その価格などの情報もコーヒーハウスに集まった。「証券」「銀行」「保険」などもここから始まったといえる。それを証明する経済上の大事件について紹介したい。
南海泡沫事件(South Sea Bubble)
スペイン領の南アメリカ植民地と貿易する会社で「南海会社」があった。奴隷を必要としているスペイン領に対して貿易を独占していることもあり、うまくいけば儲けることができると思われていた。会社の設立した目的のひとつに、戦争によるイギリス政府の借金を肩代わりする役割も同時にあった。くじや国債、信用取引など関連するキーワードがあるが、別の機会にお伝えしたい。
スペイン領との貿易植民地に奴隷や工業製品を売るというビジネススタイルなどから南海会社の株価は上昇し、それに便乗しようと当時は許可制だった株式会社が190社が無許可で作られ、それらの株価も上がっていった。うち、生き残ったのが4社というペーパーカンパニー具合であった。そんな事業一覧がこちらである。
「髪の取引をする会社」
「水銀を純金属へ変換する会社」
「永久運動を開発する会社」
「海水から金を取得する会社」
「大いに利益になるのだが、それが何であるか誰も知らない会社」
「イングランドの鋼と真鍮(しんちゅう)の会社」
「ピュックル機械会社(丸や四角の砲弾や砲丸を発射させ、戦争に大きな革命を起こそうという会社)」
このような泡沫、泡のような会社が続くわけもなく、1720年になると上昇した株価が暴落しほとんどの株が紙くず同然となってしまった。バブル経済やバブルがはじけたという言葉の語源はここから来ている。南海泡沫事件における株の取引の多くが、ロンドンのコーヒーハウスで行われていた。
お酒が出るようになり、賭け事が行われるようになり、品が悪くなったことがきっかけで衰えていてしまい、現代のイギリスには栄えたコーヒーハウスがなくなってしまった。
身分や階級のことを気にしない時代から、世の中が落ち着くと同じ身分、同じ階層で集まるようになった。気の合った同じような好みの人ばかりが集まるようになった。
コーヒーハウスの名残で「クラブ」というものに変わっていったが、あまり開放的でなく、決まった会員しか入れない組織になっている。
現代のコーヒーハウスに似たものはどんなものかを「身分や階級のことを気にしない」という観点で考えたが、映画館や美術館、図書館と「館」が付くものと考察した。
1ペニーでコーヒーが一杯。暖かい暖炉があり、自由にいろいろな人があらゆる会話を楽しむ。文化を創出する瞬間に立ち会えることは味わい深い経験であると想像する。
あったらいいな、コーヒーハウス。いってみたいな、コーヒーハウス。
参考
https://aitari.net/2019/12/27/the-meaning-of-cha-wo-shibaku/
https://www.ejcra.org/column/ca_76.html
https://pepera.jp/story_of_bubble/south-sea-bubble/
https://www.y-history.net/appendix/wh1003-075.html
https://www.y-history.net/appendix/wh1003-075.html