小説 切手はどこへゆく【第一話】 2022年2月22日 午後の授業はいつだって眠たかった。 声のボリュームがでかすぎておかしいと有名な数学の先生の授業ですら、わたしは気づいたら頭がだんだん机に近づいていた。そんな様子のわたしを見た親友はいつも笑っていた。 「今日は豪快だった」「今日は寝てるかわからないくらいの角度だった」 とか言って、すっかりわたしの評論家になっていた。高校... SUZUME
小説 切手はどこへゆく 第二十八話 2024年2月6日 どさっと大きな音を立てて、日記帳を置いた。その風圧で真っ白な封筒が少し動いた。動いたところで、切手が出てくるわけではない。意味が分からなかった。手紙は、切手がないと届かないらしい。じゃあ、この切手のない手紙は、どうやって家に届いたのか。誰かが直接、郵便ポストに入れたのか。翠からの手紙だから、翠しか考えられない。でも、翠... SUZUME
未分類 ベッカム・ヘアーに憧れていた頃 2023年11月21日 過去3回に渡って『平成経済20年史(紺谷典子)』を用いて平成の日本経済を振り返ったこのシリーズも今回が最後となる。郵政民営化の背景について、各国の取り組みを眺めてみよう。世界で郵政を民営化した国では、次のような問題があった。 「手数料が上がる」アルゼンチンは4倍、スウェーデンは小口を60%増となり最終的にアルゼンチンは... SUZUME
脳科学 「協調性の高さ」がもたらす別の顔 2023年11月5日 私たちは、あらゆるカテゴリの中に生きています。 「家族」「会社」「地域」「世代」「趣味」‥カテゴリが作られるときには、必ず「その中にいる人」と「それ以外の人」という区分けがなされることになります。カテゴリ内の結びつきが強ければ強いほど、その線引きも強く反映されるでしょう。 近年では、同時多発的に世界で戦争が勃発しており... SUZUME
小説 切手はどこへゆく 第二十七話 2023年10月11日 どのくらい時間が経ったのか、考えるのを忘れるくらいに翠と話を続けていた。話す頻度が減っても、顔が見えていなくても、ずっと話をできるのは、翠しかいないんじゃないだろうか。お互いくだらない話で笑い合ったあと、翠が唐突に話を変えた。「そういえば、遥夏ちゃん、手紙書いてくれた?」「あ~……手紙……」「絶対書いてないでしょ。返事... SUZUME
未分類 レイザーラモンHGを家族の前で笑っていいのかわからなかった頃 2023年10月3日 前々回、前回と継続して、『平成経済20年史(紺谷典子)』を用いて平成の日本経済を振り返る。小泉政権は橋本改革と同様「財政構造改革」を所信表明演説にて宣言した。その財政構造改革について橋本元首相は「間違っていた」と反省を述べた。しかしながら、「国債発行30兆円以下」「公共事業見直しと削減」などを柱に緊縮財政と増税は進んで... SUZUME
心理学 偏った情報から判断される能力 2023年9月19日 ふとテレビを見ると、殺人事件の容疑者が捕まったというニュースが飛び込んできました。その犯人の特徴は、以下のようなものであると報道されていました。 ・40歳独身、実家暮らしの男性・短大を退学後、仕事を転々とし現在は無職・両親は離婚、母親は水商売・友達はおらず、家に引きこもって毎日ネットゲームをしていた これらの情報を見て... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第二十六話】 2023年9月5日 https://suzume-newsletter.com/?p=754 菜々と別れて、自転車をこぎ始めた。 予備校とか、進学塾とか、今まで派手な色だな、としか思っていなかった看板が、こんなに自分の身近なものだとは。文字としてだけ認識していたそれが、情報になってわたしを襲ってくる。駅前は情報量が多い。ため息が出そうだっ... SUZUME
暮らし デジタルモンスターの絶縁シートバグで遊んでいた頃 2023年8月23日 前回は、平成の時代における成長や所得の推移についてお伝えした。改革続きであった平成の政権の中でも「細川政権」について注目した。 今回も『平成経済20年史(紺谷典子)』より平成の日本経済を振り返りたい。 細川政権の後は羽田政権、村山政権、橋本政権と続く。 村山政権は1995年1月に発生した阪神淡路大震災、地下鉄サリン事件... SUZUME
生物学 「姿勢が悪い」ことがもたらす思わぬ弊害 2023年8月8日 子どもの頃、「姿勢を正しなさい」と怒られることはありませんでしたか? 私は、椅子に座っている時の姿勢をよく親に注意されていました。 大人になると、「姿勢が悪いことは身体に悪いっぽい」というざっくりとしたイメージこそあるものの、具体的にどのような要因があるかは、そこまで気にしたことはない人が殆どではないでしょうか。 「骨... SUZUME
小説 切手はどこへゆく 第二十五話 2023年8月3日 鉄板はいくらきれいにしても、また次のお好み焼きを焼き始めると、焦げ付いてくる。追加注文したお好み焼きも食べ終わり、制限時間が迫ってきたが、誰も話が尽きる様子はなかった。真凛の「デザートを食べたい」という声に全員が反応し、バニラアイスが届くのを待っていた。もう鉄板の出番がないことはわかっているし、きれいに鉄板をきれいにす... SUZUME