過去3回に渡って『平成経済20年史(紺谷典子)』を用いて平成の日本経済を振り返ったこのシリーズも今回が最後となる。

郵政民営化の背景について、各国の取り組みを眺めてみよう。
世界で郵政を民営化した国では、次のような問題があった。

「手数料が上がる」
アルゼンチンは4倍、スウェーデンは小口を60%増となり最終的にアルゼンチンは破綻した。

「どの国でも郵便局の数が減少」
スウェーデンは1/5、ドイツは1/2、イギリスは2/3となった。

他に、「集配をやめられる」「サービスが受けられない」「配達エリアが広くなり遅れ、誤配達も増える」など、民営化の犠牲はいつも国民であった。そして、1990年代でこれらの問題はわかっていた。

ニュージーランドでは、郵便、郵便貯金が民営化したが14年後に国有へ復活した。
郵政民営化議論中の小泉首相が視察した時には、クラーク首相によるとポストに関して「国有の方が効率的で取り扱いが多く、民間ポストはほとんど使わない」また、小包については「郵便よりも競争的だが、国営がしっかりサービスしている」と説明があった。
「民営化の失敗を修復する」を公約して政権についたのがクラーク政権であったが、視察の収穫はどうだったのだろうか。

ドイツでは、民営化した後にすぐ値上げし、3万近くあった郵便局は5000局に削減、ポストの数も1/4近く撤廃された。郵便局のない町、再配達もしてくれないので、留守だと遠くの郵便局まで受け取りに行かないといけない状況に対して、郵便局の急激な減少は社会問題になった。

EU諸国は民営化したが、郵便事業は一定の範囲で独占を認められたが、都会、大口顧客で得た利益にて、採算の取れない地域の損失をカバーするような運用を持って全国一律のユニバーサル・サービスを維持できた。イギリスなどではユニバーサル・サービスを維持するために多くの国が補助金を出し続けている。EUでは、イギリスのブレア首相は小泉政権の郵政民営化を皮肉に「日本だけが逆行している」と語った。

それでは、日本ではどのような議論がなされていたのか。

竹中郵政民営化担当大臣は民営化の利点として、30万人の公務員が減ることで税負担が減ることを主張した。
しかし郵政事業は独立採算であり、税金が使われていないと指摘された。給与について税金は使わずに自分達で稼いでいたのだ。また、補助金も受け取っていなかった。
民間企業になれば納税するので税制にプラスと主張したが、元々公社化されたあとは「国庫納付金」という形で納税することは決まっていた。

つまり、他国が民営化した理由を眺めても民営化する理由がなかったのだ。

国民に利便も利益ではなく、不利益と不便を与えた郵政民営化は一体誰のための改革であったのか。国民が望まず、他国で起こった問題が郵政民営化を進める政権を「なぜ」と振り返るが、もし現在進行形で似ていることが起こっているとすると、それは危機である。

過去3回に渡って『平成経済20年史(紺谷典子)』を用いて平成の日本経済を振り返ったこのシリーズも今回が最後となる。

郵政民営化の背景について、各国の取り組みを眺めてみよう。
世界で郵政を民営化した国では、次のような問題があった。

「手数料が上がる」
アルゼンチンは4倍、スウェーデンは小口を60%増となり最終的にアルゼンチンは破綻した。

「どの国でも郵便局の数が減少」
スウェーデンは1/5、ドイツは1/2、イギリスは2/3となった。

他に、「集配をやめられる」「サービスが受けられない」「配達エリアが広くなり遅れ、誤配達も増える」など、民営化の犠牲はいつも国民であった。そして、1990年代でこれらの問題はわかっていた。

ニュージーランドでは、郵便、郵便貯金が民営化したが14年後に国有へ復活した。
郵政民営化議論中の小泉首相が視察した時には、クラーク首相によるとポストに関して「国有の方が効率的で取り扱いが多く、民間ポストはほとんど使わない」また、小包については「郵便よりも競争的だが、国営がしっかりサービスしている」と説明があった。
「民営化の失敗を修復する」を公約して政権についたのがクラーク政権であったが、視察の収穫はどうだったのだろうか。

ドイツでは、民営化した後にすぐ値上げし、3万近くあった郵便局は5000局に削減、ポストの数も1/4近く撤廃された。郵便局のない町、再配達もしてくれないので、留守だと遠くの郵便局まで受け取りに行かないといけない状況に対して、郵便局の急激な減少は社会問題になった。

EU諸国は民営化したが、郵便事業は一定の範囲で独占を認められたが、都会、大口顧客で得た利益にて、採算の取れない地域の損失をカバーするような運用を持って全国一律のユニバーサル・サービスを維持できた。イギリスなどではユニバーサル・サービスを維持するために多くの国が補助金を出し続けている。EUでは、イギリスのブレア首相は小泉政権の郵政民営化を皮肉に「日本だけが逆行している」と語った。

それでは、日本ではどのような議論がなされていたのか。

竹中郵政民営化担当大臣は民営化の利点として、30万人の公務員が減ることで税負担が減ることを主張した。
しかし郵政事業は独立採算であり、税金が使われていないと指摘された。給与について税金は使わずに自分達で稼いでいたのだ。また、補助金も受け取っていなかった。
民間企業になれば納税するので税制にプラスと主張したが、元々公社化されたあとは「国庫納付金」という形で納税することは決まっていた。

つまり、他国が民営化した理由を眺めても民営化する理由がなかったのだ。

国民に利便も利益ではなく、不利益と不便を与えた郵政民営化は一体誰のための改革であったのか。国民が望まず、他国で起こった問題が郵政民営化を進める政権を「なぜ」と振り返るが、もし現在進行形で似ていることが起こっているとすると、それは危機である。

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