現代に暮らす上では多くの選択肢から決断することが個人レベルで必要になっている。
同じように過ごし成人の日を迎えた同級生であっても、その内容に納得できるかによらず、選択する進路によって人生の内容が大きく変化する。
不安定な世の中を生き抜くためのキーワードが「型」である。そのヒントを室町時代に能を創った世阿弥から拝借したい。
世阿弥は是風(ぜふう)と非風(ひふう)を『至花道』にて説いた。
「非風かへて是風になる遠見あり」
(否定されるべき逆の要素を名人が少し交えると、飛躍的効果がある)
(否定されるべき逆の要素を名人が少し交えると、飛躍的効果がある)
是風は標準的、スタンダードな演技であり、非風は否定されるべき正当ではない演技のことをいう。
飛躍的効果とは、社会的な地位であったり、金銭面の報酬であったり、現代に暮らす中で得たい結果であると考える。
それを得るために、普段通りでない慣れない行動をそのまま取り入れて失敗する例は数え切れない。
「名人」が「少し」交えると、「飛躍的効果」があるのだ。
失敗する原因として名人になる、是風を極めるというプロセスが抜け漏れていることが挙げられる。
名人になるために必要なのが「型」である。
もっとも身近で確認できる型は、たい焼きであるかと思う。
混ぜ合わせた材料を流し込み手早く完成させる様子は、待ち時間に価値を与えている。
当然、型と異なるたい焼きは生産されることはない。
そんな型を作ってきた自負はあるだろうか。
何かを学ぶのために先生や師匠に指導を受けるということは、それが効果的であるからこそ現代まで続いている。
形になるまでに時間がかかるものに焦ることがあるが、稽古の基本は型を学ぶこと。
型は世阿弥の言い方では、木製の鋳型の「形木」を指す。
能に限らず、学校・仕事・多様な活動においてまずは鋳型を作り上げること、是風を極めることを徹底していきたい。