小説 切手はどこへゆく【第八話】 2022年6月14日 https://suzume-newsletter.com/?p=337 わたしも部長も、顧問の表情から何かを察したのか、少し沈黙が流れた。うっすらと、息苦しさを感じた経験した記憶はあるが、顧問のそれとは計り知れないだろう。 「部長、全員揃いました!」後輩からの声掛けで、わたしたちの沈黙は終わった。顧問は、わたし達のは... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第七話】 2022年5月25日 https://suzume-newsletter.com/?p=321 最終学年初日だからと言って、ずっとセンチメンタルではいられないようだった。始業式が終わり、教室で担任から告げられた連絡事項で、教室は一気にどんよりした。 「来週の火曜日に、実力確認テストあるから。ちゃんと二年生の復習しておけよ~」「先生、テスト範... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第六話】 2022年5月10日 https://suzume-newsletter.com/?p=286 先生の声に促された大群に混ざって、三年生の教室がある階まで階段を上った。階段を上って、少し乱れた呼吸を整えてから、教室のドアを開けた。 無駄にきょろきょろしてしまうのは、きっと少し不安な気持ちもあるのだろう。教室全体から感じる、どことなく探り探り... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第五話】 2022年4月26日 https://suzume-newsletter.com/?p=265 目覚まし時計の音が聞こえた。しばらく聞いていなかったこの音が、わたしに学校生活という現実に突きつけた。 そう、今日は始業式の日だ。 まだ春休みだったらいいのに、と思う気持ちは、わたしのあくびの回数に反映されているようだった。学校に着くと、下駄箱付... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第四話】 2022年4月12日 この古谷という男は、ものすごく簡単に言えばモテるやつだ。 運動神経が良くて、頭も悪くない、古谷のことを「かっこいい」と言う女子がいたという噂も聞いた。でも、古谷が誰かと付き合う、みたいなことはなかった。 古谷はずっと、翠のことが好きだったらしい。わたしが初めて古谷から恋愛相談を受けたのは中学2年生だったから、そこからず... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第三話】 2022年3月22日 https://suzume-newsletter.com/?p=129 もうすっかり暗くなったころに、部活は終わった。 頭の片隅に進路希望書のことはあったけど、体を動かしていると、もやもやがいなくなったような気もした。過去最高のスリーポイントを決めたあとに、どうにかなるっしょ、と思えたから、わたしって単純だ。ボールを... SUZUME
小説 切手はどこへゆく 【第二話】 2022年3月8日 https://suzume-newsletter.com/?p=71 学生って面倒くさいなあって思うときは、だいたい怒られている時だ。 「稲村さん、提出期限過ぎてるんだけど。」「……すいませ~ん。持ってくるの忘れました。」 あはは、と笑って誤魔化そうとしたわたしを、担任は見逃してはくれなかった。 「そういうと思って、... SUZUME
小説 切手はどこへゆく【第一話】 2022年2月22日 午後の授業はいつだって眠たかった。 声のボリュームがでかすぎておかしいと有名な数学の先生の授業ですら、わたしは気づいたら頭がだんだん机に近づいていた。そんな様子のわたしを見た親友はいつも笑っていた。 「今日は豪快だった」「今日は寝てるかわからないくらいの角度だった」 とか言って、すっかりわたしの評論家になっていた。高校... SUZUME